警察に捕まって、脱走して、ドブ川にダイブして、また警察に追われ、最後、同僚にわっしょいわっしょい担ぎあげられる夢をみた。
兎角、最後夢の中の自分は楽しそうだった。夢占いでいうと、無意識の中で自由になりたいという願望というのが定番のはずだ。
警察に追われてたのに、めっちゃ起きた後爽やかだった。深夜12時。猛烈に甘い物が食べたくなり、アイスを買いに行く。砂糖は良くないのに、それを欲してしまう。理性は崩壊寸前。
二度寝して、起床。朝5時のアラーム。こんどの寝起きは現実と地続きで、ただただ憂鬱。唯一の希望が明日から4連休で、ゆるゆるに行ける事。とにかく、まとわりつく人の毒素をとにかく抜きたい。
今日も今日とて、横須賀の公共事業工事。この2週間、ここの現場に72歳のじいさんと、最近職場復帰した飲み過ぎ病み上がりの65歳の元職人とともにいく。金曜日は元職人が休みのため、じいさんと2人で。
ここの現場は、自分の会社の別支所の人が沢山入ってて、自分達は、肩身が狭い。KY票にサインして、顔認証登録ができない自分を除いて顔認証して、8時半からラジオ体操、朝礼。実際に作業するのは9時くらい。
今、自分がやっている作業は、地下一階から一階玄関エントランスに、コンクリートガラを運んで、デッカイ台車にトン袋というデッカイ袋をセットして、それにひたすらぶっ壊された元トイレのコンクリートガラを投げ入れるというものだ。
ただでさえ、誰もパキパキ仕事していない現場。俺と、じいさんと、アスペルガーな若い子の3人で、ウルトラゆっくり運ぶ。じいさんはズルズル引きずりながらなんとかあげる。俺は本気のペースの3分の1くらいのスピードであげる。普段意味不明なレベルで、パキパキ動くアスペルガーもゆっくり運ぶ。労災を起こさないのが最優先事項の大義名分があるから、ゆっくりゆっくり運ぶ。脳ミソも何もかも省エネ。何も考えず、アリのように動く。
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合間合間に満パンになった台車を移動したり、空台車をセッティングしたり、職人に頼まれた事をこなす。話しかけやすいのか消去法なのかアレヤコレヤちょっとした雑用を頼まれるのが大体自分になる。現場仕事の職人好みの、できる限り元気にニコニコ返事をする癖は身体に染み込んできた。
そんな自分にも、嫌だなと思う人がいる。50後半と思われる、他支所のチクチクおじさんだ。チクチクおじさんは、人に注意をチクチクしてくる。例えば、「朝KY書いてください」とか「顔認証じいさんに教えてください」とか、職長に言われるならまだしも、チクチクおじさんは人のミスをチクチク言ってきてめんどくさい。あと、チクチクおじさんのどうしようもないと思う所は、自分より上役と思う人とだけ仲良く話して、自分より下役だとみたら、チクチク注意をしてくるか、仕事中に指示してくる所だ。チクチクおじさんは、見る限りそんな仕事ができるわけではないが、自分の担当する地下一階の雑工軍団6人を纏める役になっているので、めんどくさいが一応従う。しかしながら、ストレスフルマックスの極みである。
しかしながら、チクチクおじさんには本当にイライラする。我慢とか理性とか、段々と頭が吹っ飛んでいく。気がついたら、自分は反撃していた。
前にチクチクおじさんが「台車は2人で運んでください」とか言ってたのにチクチクおじさんが一人で台車を運んでいるのを見つけたのだ。
反撃。好機。来る。
「一緒に運びます」と自分から言った。チクチクおじさんは「いいよいいよ」って言ってきた。
「前に一人で運ぶなっておっしゃいましたよねえ。一緒に運びますよ」
チクチクおじさんは、苦虫を噛み潰したような顔をする。
篤志家を目指している人間がやるべき事なのか否か、まわらない頭で考えるが、やってしまったものは仕方ない。
最近、自分が老人介護職員で、デイケアでもしているのかな?と思う事が多々ある。何か作業するにも72歳のじいさんと必ず自分がセットになっている。明らかに体力及び認知機能がおちてるじいさんの作業の指示は、必ず俺を通して、みんな言ってくる。勝手によく分からない作業をしているじいさんを連れ戻したり。非力のじいさんが重くて台車にセットしているトンパックにコンクリートガラが上手く入れられなくて、こぼした破片を掃除したり、じいさんが台車にひかれて、怪我した際は、会社に電話して、連絡相談した。
それにしても、ここの現場は、特に職人と雑工の扱いの差が激しい。職人にはロッカーがあって、コーヒーとかポットでインスタントの粉を入れてセルフで飲んでいい感じだけど、雑工にはなにもない。限りある休憩室の席も、職人は全員分あるが、雑工には余った席がちょろっとあるだけだ。チクチクおじさんはポイント稼ぎに自分らが飲めないポットの水を補給する。職人らは、金の話をずっとしている。ビットコインと競艇やら競馬、また職人向け単発アプリなどの話が全部ごっちゃになっている。
「週明けに顔認証の登録やってもらうからね」
帰り際そう言われた。この顔認証システムも何が目的でやっているのか理解不能だ。コンプライアンスとほど遠いいこの雑工にもコンプライアンスでがんじがらめにしようとする。
帰り際、じいさんは上機嫌に「今日は無事に終わってよかったねえ〜」と喋る。それには同感。ああだこうだKY書いてないやらのコンプライアンスやら規則とかでギャーギャーー言われるのが本当に嫌だ。じいさんが体調悪いとか軽く言っただけで、わ〜わ〜大騒ぎしたりと、本当にめんどくさい。
「俺デンマーク行きたいんだよなあ。オランダのチューリップ畑も見たいんだよなあ。俺海外旅行行ったことないけど、100万円で世界一周できるかなあ?死ぬまでに海外行ってみたいんだよなあ」
帰り道、俺の運転する軽の箱バンで語るじいさんの夢。アレヤコレヤ介護するのは、めんどくさいけど、このじいさんの事がなんとなく好きなのは、夢を語って、前向きだから。72歳になっても、頑張って働こうとする姿勢は好感が持てる。
「来週もよろしくなぁ」と会社についてお別れ。
そして事務所に行くと、来週から違う現場に行くことになるというのを伝えられた。多分じいさんが色々面倒ごと起こしたり、厚木の本隊側の都合だろう。なんとなく一抹の寂しさと、正直ホッとした。みんなだらだら仕事しているからそこまで疲れないのだけど、社会の嫌な所が凝縮したような今の現場の雰囲気が好きではないから。じいさん、多分首だろうな。もう会うこともないんだろうな。
死ぬまでにじいさん、海外旅行行けたらいいな。